昭和47年06月06日 参議院 文教委員会

[202]
日本共産党 加藤進
私がいま問題にしておるのは、もうわれわれが見のがすことのできない重大な犯罪者としての暴力学生の問題について言っているわけです。大学もそれなりの努力をしておることは皆さんも御承知のとおりです、いまおっしゃったように。しかし、文部省はどうですか、ほとんど何にもやっておらないじゃないですか。

第一、東大にしろ、早稲田大学にしろ、法政大学にしろ、その中をいわば根城にして公然と活動しておる暴力学生、これはもう名前まで明確になっておるはずじゃありませんか。こういういわば犯罪的な学生に対して、学内に籍があるからといって学生のように見ている、これを指導する、これを善導する、こんなことで、はたしてこの問題が解決できると思いますか。

彼らは、学校を破壊しています。学校を占拠しています。われわれ国民の財産まで彼らの手でじゅうりんされています。学生はリンチを受ける、先生も学校へ入れない、こんな学生がうようよいるこの現状に対して、一体、文部省は何をやっているか。善導でいいですか。彼らの指導だけでこれで解決できますか。

私があえて言いたいのは、このようなはっきりしている学生に対して、文部省のなすべきことがある。それは大学当局を激励し指導して、このような学生諸君を学内から排除することじゃないですか。取り締まることじゃないですか。必要ならば警察の力を借りてもいいじゃないですか。

このことを何一つやらないで、結果において、大学当局の責任だ、大学当局の指導が悪い、大学当局の処置が悪い、そのことで今日まで問題の所在を不明確にしてきたのが文部省であります。私はそのことについて重ねて所見をお聞きしたい。

[203]
政府委員(文部省大学学術局長) 木田宏
いま御指摘がございましたように、文部省としては、いろいろな諸会合その他を通じまして、大学当局に、学内における秩序の維持、学生の指導の徹底ということにつきまして、また、非違を犯した学生に対する処置の適正ということにつきましても、機会のあるごとに指示をいたしておるところでございます。

しかしながら、処置をとるべきものは大学当局であり、また、犯罪に対してその是正を行ないますのは治安当局でございまして、文部省といたしましては、大学当局に対しまして、いま御指摘がございましたように、自覚を促し、その明確な大学当局としてとるべき措置をとるように要請をするというのが私どもの立場だと心得ております。

[204]
日本共産党 加藤進
では、具体的に聞きます。去る4月3日、衆議院の予算委員会で、わが党の松本君が、東大、早大に起こっておる事態について文部大臣に質問をいたしました。このとき、文部大臣は、このような事態は知らなかった、直ちに調査して事態の解決に努力したいと答弁をされております。それでは、東大はいまどのような状況になっておるのでしょうか。特にここで問題になったような医学部精神科の病棟は、一体、現状はどんなようになっておるのでしょうか。

それからもう一つ、早稲田大学のこういう暴力学生のばっこの状況、封鎖の状況は解除されておるのでしょうか。もうすでに時日は相当たっています。どのような処置をとられたのか、その点を具体的にお話し願いたいと思います。

[205]
政府委員(文部省大学学術局長) 木田宏
前回、衆議院で、東大精神科の現状について是正を求めるような御指摘がございました。その前後におきまして、また、その後引き続き、私どもは、関係者に機会を得てその後の状況の是正について依頼をいたし、善処方を常に求めておるところでございますが、東大の精神科の実情から申しますと、精神科の病棟で御指摘になりました事態そのものは改善されておりません。その是正方につきましては、御指摘のありましたあと、大臣からの御指示もございまして、私ども、東大の医学部長、病院長にその旨も伝え、すみやかな是正措置をとるように重ねて依頼をいたしました。また、東大の学長に対しましても、東大の精神科の病棟の無秩序な状態の是正ということにつきましては、私からもその善処方を二度にわたりまして直接依頼を申しました。しかしながら、東大病院の中の体制が、いま御指摘がございましたようなことについてどう処置をすれば是正できるものかどうかという点についての見通しが立たない関係と思いまするけれども、関係者をできるだけ同じテーブルにすわらせて双方の合意点を見出すべく努力はいたしておりまするけれども、それ以上の事態の進展を見るに至っていないということは遺憾でございます。

早稲田大学の件につきましては、一部の学生諸君が入校ができないというような御指摘があったかと記憶いたしておりますが、大学当局につきましては、学内に若干の混乱の状態があるということはなお承知はいたしておりますけれども、学生が安心して授業を受けられないというような事態にはなっていないはずだという返事をそのときに聞いたかと考えております。今日の状況につきましては、ただいまのところ正確にそれがどういう事態になっているか、恐縮でございますが、私は承知をいたしておりません。

[206]
日本共産党 加藤進
それではお聞きしますけれども、東大精神科病棟のいわゆる赤レンガと称せられるところにはどういう連中が巣くっていますか、御存じですか。これは浅間山荘の連合赤軍の関係者が入っておるのですよ、連合赤軍の関係者が。そうして、その連中のために正規の教職員さえこれに近づけないのです。こういう事態を現に目の前にしておきながら、お互いに話し合いのテーブルにつかせるとは、どういうことですか。大学は被害者ですよ。被害者としての大学学生諸君に対して、加害者であり凶悪な犯人に対して、同じテーブルにつかせるというのは、一体どういうことを考えておるのですか。一体、文部省は、犯罪者と認めておらないのじゃないですか。殺人をあえて犯す、人を殺傷する、殺傷するばかりか、大学の器物を破壊する、こんなことがやられておっても、なおかつ学生という籍があるからということだけで一学生としての取り扱いしかできない、こういうところに文部省が今日の事態を引き起こしておる大きな原因があるんじゃないですか。

早稲田大学ではどうか。早稲田大学では、この問題が国会で提起されてからなお暴力事件はあとを断っていません。すでに4件の暴力事件が起こっております。

その一つは、こういう事件です。それは6月の3日に起こりました。早稲田大学の文学部の正門に入ろうとして行った学生が、いわゆる革マル一派の諸君によって中庭に拉致され、教室内で角材で乱打され、約3時間にわたって暴行を加えられました。自力ではうようにして正門にたどりついたときに出会った学生がやっと救って、救急車で病院に運んだのです。1カ月以上の重傷だという。これが、皆さんの管理しておられる、皆さんの指導しておられる大学ですか。この大学をまだまだ大学当局の善意ある処置にまかせて、あなたたちはぬけぬけとしておられるのですか。私は、この点について、重ねて、文部大臣、これでいいのかどうか、このような状態を放置して今後ともおかれるのかどうか、この点だけをまず確かめておきたいと思います。

[207]
文部大臣 高見三郎
御承知のように、文部大臣は大学に対して命令権を持っているわけじゃございません。大学の内部で起こりました問題は大学で処理するということが大学自治の基本的な原則であることは、加藤先生も御承知のとおりであります。警察官を導入すればいいじゃないかとあなたはおっしゃいますけれども、文部大臣が要請して大学に警察官を入れるわけにはまいりません。大学当局が警察官の導入を要請するならば、それは私はまことにけっこうなことだと思います。

東大病院のごときは、進んで大学がやるべきであると私は考えております。それをやらないところに、私がさっきから申し上げる、大学の管理能力というものに私は現状のままではいけないということを申し上げておるわけなんであります。文部大臣が文部大臣の権限でもって大学に警察官を入れるというような状態が起こりましたら、それこそ教育に国家権力が介入するということになろうと思います。これは厳に慎まなければならぬ問題で、私もまことに遺憾千万と思いますけれども、その点はいかんともいたし方ないということを御承知いただきたいと思います。

[208]
日本共産党 加藤進
私は、いま言われたような、直ちに警察権力を介入させろなどということを申しておるわけじゃない。問題は、このような暴力学生の諸君を文部省はどう見ておるのか、政府はどう見ておるのかということであります。犯罪者じゃないですか。犯罪を犯しておるのじゃないですか。社会的な犯罪者ですよ。社会的な犯罪者であるのに、大学の中にいるからといって彼らが思うままに活動できるような状態を今日まで許している、ここに問題があるのじゃないですか。

この事態に対して、まず第一に文部大臣が責任を持って大学当局に対して積極的に協力してこのような事態を解決する、そして犯罪学生の諸君に対する処置をとり、場合によっては大学との話し合いによって警察によってある者は逮捕する、こういう処置を断固としてとるべきである。これより解決の方法はない。私はこういうことを言っているのでありまして、私が今日申し上げておるのは、何も大学の自治を破壊してまでかってに権力の介入をやれなどということを申し上げておるのでないということだけははっきりしておきます。