昭和50年03月07日 参議院 予算委員会

[352]
日本共産党 渡辺武
次に、私は暴力問題について伺いたいと思います。2月28日の間組爆破に見られるように、爆弾事件が引き続いておりますけれども、これと並んで、学生の集団暴力も目に余るものがあります。こうした暴力学生が大学内外で最近5カ年間に引き起こした暴力事件の件数、それから死んだ人、負傷者などがどれだけ出ているのか、まず警察庁に伺いたいと思います。

[353]
政府委員(警察庁警備局長) 三井脩
いわゆる極左暴力集団等が相互間において行います内ゲバ事件について申し上げます。

昭和45年以降本年2月末までに、総計1208件発生して、うち死亡いたしましたのは19件、22人であります。負傷者は2554人、この間検挙いたしましたのは1793人を検挙いたしております。

年次別に申し上げますと、昭和45年は175件発生し、死亡2件、2名、負傷525人、検挙584人。

46年の発生は272件、死亡は4件、5人、負傷420人、検挙は216人であります。

昭和47年は発生183件、死亡2件、2名、負傷338人、検挙164人。

48年は発生238件、死亡1件、2名、負傷572人、検挙361人であります。

昭和49年は発生286件、死亡は10件、11名、負傷607人、検挙は428人に及んでおります。

50年2月末現在では、発生54件、死亡事件は2月末現在ではございません。負傷91人、検挙40人という状況でございます。

[354]
日本共産党 渡辺武
わずか5~6年の間に19人が殺される。2554人が大けがをする。異常な事態だと思うのですね。一体、どういう連中がこういうことをやっているのでしょうか。

[355]
政府委員(警察庁警備局長) 三井脩
いわゆる極左暴力集団というものでございまして、俗に言われる反日共糸の学生の各セクト、こういうものが主でございます。

[356]
日本共産党 渡辺武
昨年の5月13日と6月の26日に、法政大学では中核派と革マル派の大規模な衝突があって、死んだ人も出たようであります。その事件の概要をおっしゃっていただきたいと思います。

[357]
政府委員(警察庁警備局長) 三井脩
昨年5月13日の事案の内容でありますが、この日の午後4時過ぎ、法政大学の正門から市谷駅方向に中核派約150名が向かっておりましたが、これを革マル派約150名が待ち受けて襲いかかりました。中核派との間で乱闘となり、中核派1人が死亡しました。また、双方に合わせて18人の負傷者を出しております。警察におきましては、この犯行現場付近におきまして、革マル派11人、中核派15人、合計26名を現行犯逮捕いたしました。その後の捜査によりまして、さらに革マル派18人を検挙いたしました。この事件で合計44人を検挙して送致をいたしました。

次に6月26日の事案でありますが、これはこの日の午前4時過ぎ発生いたしました。法政大学の中で待ち伏せをしておりました革マル派約50人、これが構内に入ってきました中核派約70人を襲撃をして、双方で合わせて54人の負傷者を出した事案であります。これにつきましては、この法政大学正門前付近、つまり犯行現場でありますが、ここで両派合わせまして98人を現行犯検挙いたした次第でございます。

[358]
日本共産党 渡辺武
この事件のときに法政大学の構内にある学生会館を捜査されたそうですけれども、ここでどんな凶器を押収されたか、その物件や数はどのくらいか、それもおっしゃっていただきたい。

[359]
政府委員(警察庁警備局長) 三井脩
まず5月13日の事件に関しまして、5月19日に法政大学の学生会館の捜索を行いました。ここで押収いたしましたのは、鉄パイプ71本、旗ざお43本、ヘルメット5個、それから金のこの、これは刃でございますが、1個等を含めまして、合計で180点を押収しております。

また、6月26日の事件につきましては、事件当日現行犯逮捕いたしましたが、この犯行現場におきまして押収を行い、鉄パイプ53本、鉄棒2本、竹ざお91本など合計648点を押収し、さらに事後の捜索を6月30日に行いましたが、この際ヘルメットなど5件、6件を押収いたしました。したがいまして、6月26日の事件では、これは学生会館の中で押収したものではないということになるわけであります。

[360]
日本共産党 渡辺武
大学の構内にある学生会館が暴力学生の武器庫になっている。これは私は大変なことだと思うんです。一体こういう事件を引き起こしたこの学生、これは全部法政大学の学生なんでしょうか。

[361]
政府委員(警察庁警備局長) 三井脩
逮捕をいたしました学生等の中で、被疑者の中で身元が判明いたさない者もかなりあるわけでありますが、約90名は大学生であるということは判明いたしましたが、90名のうち法政大学の学生は5名であります。その他は他の大学の学生ということになります。

[362]
日本共産党 渡辺武
さっきのお話で、殺された人が出ましたけれども、この人はどこの職場にいた人ですか。何か職場にいた人だと聞いておりますが。

[363]
政府委員(警察庁警備局長) 三井脩
中核派の活動家でございまして、墨田区役所の職員であります。学生ではございません。

[364]
日本共産党 渡辺武
大学に、その大学の学生以外の大学からどんどん入り込んでいる。しかも、大学生でない者までが暴力をふるうために自由自在に出入りしている。しかも、この暴力集団が一般学生や教職員に対してしばしば検問なるものを行っているということを聞いておりますが、文部省はこういう実態をつかんでいらっしゃいますか。

[365]
文部大臣 永井道雄
学生の暴力というものがあることはきわめて遺憾であるということは、御指摘のとおりでございます。

検閲の問題でございますが、法政大学、1月の時点においてそういう問題があったのではないかというので私どもでも調べておりますが、教職員に対して妨害行為があったけれども、他の学生同士の検問という形はなかったというふうに報告を受けております。

[366]
日本共産党 渡辺武
ここに、そういう暴力学生が暴力をふるうために、法政大学の学生でありながら学校の構内に入ることができないという学生さんたちが、たまりかねて「法政大学のすべての教員のみなさんへ」ということで手紙を出しております。その手紙の一文を読んでみましょう。「また、「中核派」などはことあるたびに「検問」と称して、正門に「武装部隊」を配置し、学生、教職員の身分証明書を点検、持ち物の検査をおこない、学生や教職員は、なんの権限もない彼らのいうなりになって、彼らの手にした竹竿の下をくぐってでなければ大学へ入れないという屈辱を味あわされているのです。」、こう書いてある。恐らくこれはうそを書いていることじゃないと思うんです。一体こういうことが許されることなんでしょうか。文部大臣にもう一度伺いたいと思います。

[367]
文部大臣 永井道雄
大学に暴力がありますために、学生が大学に来て正常に授業を受けることができないということは許されるべきことではございません。ただいまの御指摘の問題については、どういうことが最近あったかということを申し上げますと、1月18日の学期末試験の初日に一部の学生集団が構内に侵入いたしまして、正門及び裏門を封鎖し、事務室に乱入するような行為がございました。そこで、これに対しまして大学に、これでは期末試験が受けられないから何か方法を考えてほしいと願い出た学生が23人おります。いまそういう23人の学生がいるということは、これらの学生は正常に試験を受けることができないということを申し出たものと考えられます。しかしながら、それにもかかわらず試験を行うことができませんでしたために、大学では当日の試験を終局において中止いたしまして、富士見校舎への立ち入りを禁止して、期末試験はレポート提出をもってかえるという事態になったというのが、われわれの受けている報告でございます。

[368]
日本共産党 渡辺武
いま文部大臣は23名と言われましたけれども、この手紙を出した学生さんたち、これは「以下登校の自由を要求する学生109名」、100名を超えているんですよ、大臣。この点をようくひとつ見ていただきたいと思うのです。大変なことですよ、試験も受けられない、授業も受けられない、親も安心して子供を大学へ送れないという事態だと思うんですね。

ところで、いまもこの法政大学ではロックアウトが行われている。学生は学内にも入れないという状態であることを御存じでしょうか。

[369]
文部大臣 永井道雄
現在、法政大学でロックアウトが行われているということについて承知いたしております。それは、先ほど申し上げました1月の期末試験というものを行うことができなかったとき以来の事態であります。

[370]
日本共産党 渡辺武
こういう事態に対して、どうお考えでしょう。

[371]
文部大臣 永井道雄
こういう事態につきまして、これは申し上げるまでもないことでありますが、学校というところは、正常に静かに勉学ができる場所でなければならない。当然のことでありますから、さような事態を回復しなければならない。それには先ほどから出ましたように死者、負傷者があるというような事件が起こりましたときには、これはとても文部省として対処できる問題でありませんから、警察の協力を得なければなりません。また、そのほかの問題につきまして、学校で正常の授業を行うという点につきましては、大学当局も何回か学生に呼びかけて、そして努力をしていますが、大学当局と私ども文部省が協力をいたしまして、そして1日も早く学内の状況が平常化して授業が行われるようにならなければならない、そういう考えで対処している次第でございます。

[372]
日本共産党 渡辺武
2月の24日に、東京法務局にこうした登校できない学生が訴えに行っているはずですけれども、どんな内容だったのでしょうか。

[373]
政府委員(法務省人権擁護局長) 萩原直三
お答えいたします。

ただいまお話しのように、去る2月24日に、法政大学の学生2名から東京法務局人権擁護部にそれぞれ人権相談がなされました。

その1人の言い分は次のとおりでございます。

現在、法政大学では、鉄パイプやヘルメットで武装した中核、赤ヘル、黒ヘル等の暴力集団の暴行、脅迫等により、相談者ら109名の学生が自由に登校して安心して授業を受けるということができない異常な状態が続いています。このような状態になったきっかけはさまざまでございますが、暴力学生にクラスの学友が暴力を加えられているのをとめたり、学校の施設破壊や授業妨害を批判したりしたことが、そのきっかけになったようであります。そこで、大学当局に対し申し入れ書で善処方を訴えましたが、一片の警告書を出しただけで何ら正常化のための具体的な措置をとらない。そこで、法政大学当局に、人権擁護部から、私どもの申し入れた趣旨の実行をするように説得してもらいたい、こういう趣旨でございます。

それから、もう1人の方の学生の相談内容と申しますのは、次のとおりでございます。

私たちの大学では、黒ヘルと称する70~80名の一部暴力集団によって一般学生一部50名、二部59名が授業中に実力で教室外に引き出され暴行を受けたり検問されるなど、正常な授業を受ける権利を侵されている。そこで、大学当局に再三にわたり正常化のための具体的処置をとるよう求めているが、何ら誠意ある回答を得られない。そこで、人権擁護部において学校当局に善処方を要請してほしいという趣旨でございます。