昭和60年12月11日 衆議院 法務委員会

[217]
日本共産党 林百郎
11月29日、首都並びに関西方面を入れまして通勤者の足、600万が混乱した、交通事情の上からいってかつてない大きな混乱、事件が起きたわけですが、それについて私は質問をしたいと思います。

警察に対しても厳しい批判があるので警察はもっと謙虚にこの問題に対処しなければならないと思いますが、まず最初に、中核派が84年、昨年からことしにかけて起こした事件の表を持っていますので、委員長、これを警察に見せたいと思いますが、いいでしょうか。

[218]
委員長 片岡清一
はい、どうぞ。

[219]
日本共産党 林百郎
これを見ますと、昨年の1月からことしの11月までに約33~34件あるのですが、ここで特徴的なのは毎月、中核派の事件があるということですね。殊に昨年の暮れからことしにかけては、ことしの1月には月に3件、9月にも3件、しかもこれは予告でやられているわけですね。それでほとんど検挙されていない。

この中で検挙3件と言いますが、3件といっても、例えば自民党の本部の放火事件みたいに数人がやっているのに1人しか挙がっていないということで、検挙1件というのは本当に形式だけで実質的な1件にはなりません。

これは予告をされて毎月1件ずつあって、甚だしいのは1カ月に3件もあるのに検挙が少しもできないというのは、警察ではどこに原因があると考えますか。

[220]
説明員(警察庁警備局公安第三課長) 鏡山昭典
お答えいたします。

今、表を見せていただきまして御指摘のとおりでございますけれども、極左暴力集団、確かに今度の11・29につきましても、動労千葉のストライキを支持するために国鉄を全面的に阻止するというようなことは言うわけでございまして、私どももそれに基づきましていろいろ想定をやっておりますが、ゲリラ事件といいますと、予告、例えば今から成田闘争をやる、国鉄闘争を支援するためにゲリラをやる、こういうことはいろいろその都度言うわけでございますけれども、ゲリラがどこをやるか、例えばここにいろいろございますけれども、今回は新東京国際空港公団のビルにやるぞとか幹部の家をやるというようなことはもちろん全く申しません。それから、こういうようなゲリラ情報というのは彼らにとっては一番基本的な根幹をなす情報でございまして、その意味では私ども情報収集に全力を挙げているわけでございますけれども、なかなか核心に迫る情報をとれないというのが実情でございます。

しかも、極左暴力集団が事件を起こします際には、警察の動きを事前に綿密に調査いたしまして、警察の影があるとなるとそこは避けて次の日に回すとか別のところをやるというような、いわゆる現場で逮捕されないような状態のもとでやるというのがゲリラの基本的な形になっております。そのほか、極左事件というものは、非公然軍事組織と言っておりますけれども、例えば中核派の場合は革命軍などと言っておりますが、特別の実行部隊がございまして、こういうものが組織的、機動的に計画して実行している。しかも、実行するに際しては後に証拠が残らないようにやっていくとかいうようなことで、非常に私どもも検挙が難しい状態になっているわけでございます。

しかし、3件じゃないか、そのうちゲリラらしいゲリラは自民党放火事件が去年あったのをことし1人だけだという御指摘で、そのとおりでございますけれども、この事件検挙は、ゲリラの要員を検挙するということは私ども非常に苦労しておりますけれども、かなり時間がかかっております。例えば加藤三郎というのがおりましたけれども、これを逮捕するにも5年6カ月かかっておりますし、あるいは鹿島建設を爆破しました宇賀神という連続企業爆破事件の犯人を逮捕するには7年6カ月、一番長いのは陸上自衛隊朝霞駐屯地で自衛官を殺害いたしました竹本信弘という被疑者がおりましたけれども、これを逮捕するのに10年11カ月という長い期間をかけておるわけでございます。

私ども、確かに今の状況のもとで御指摘のように検挙が進んでおらないことは事実でございますけれども、全面的解決に向けて日夜努力しておるような状況でございまして、今後ともこの解決に向けて全力を挙げて努力いたしたい、こう思っております。

[221]
日本共産党 林百郎
極左、極左と言うけれども、どういう意味で言っているか知りませんが、いかにも左翼と関係のあるようなことを言うけれども、これは暴力集団ですからね、別に左でも何でもないのです。

それで、今あなたの言われた警察の影を避けてやっているというのは、要するに警察の行動が彼らに察知されているのですか。今あなたはそう言っていた、だからこういう事件がこういうように起こるのだと。そうすると、警察の方は彼らに対して察知するルートは持っていないのですか。

[222]
説明員(警察庁警備局公安第三課長) 鏡山昭典
私どもがゲリラを押さえるためには、やはり警察官を配置しなければなりません。その場合1人とか2人でおりますと、例えば今度の11・29に際しましても、パトロールで1人で行ったために相手にはさみで襲われたということで、緊急に救援の連絡をするというようなことで結局逮捕できなかったわけでございますけれども、そういうふうに検挙するためにはかなりの警察官を現場周辺に配置しなければなりません。そういう意味で、それが向こうに知られるという場合が出てくることがございます。もちろん、相手に知られずに私どもとしましても彼らの要員を検挙したりあるいはアジトの摘発も既にやってきております。向こうの情報がとれないのかということでございますけれども、一般的な情報というのはとれますけれども、なかなか核心に迫った情報というのはとりにくいというのが実情でございます。

[223]
日本共産党 林百郎
要するに、中核派と称する暴力集団は既に11月18日に彼らの機関紙の「前進」というので、「電車の運行を実力で阻止する」「国鉄線の、千葉県・首都圏的、全国的なストップ」「天井しらずの、激烈な物情騒然たる情勢をつくりだす」こういうふうに、電車の運行を実力で阻止する、国鉄線の千葉県・首都圏、全国的なストップをやると機関紙に書いてあるのですよ。

それから、彼らの今までやっていた行動を見ますと、ケーブルの切断、通信ケーブルをねらった犯行を重ねているのですね。それで社会の混乱を招いている。

「53年5月の成田空港開港時には埼玉県内で東京航空交通管制部に通じる同軸ケーブルを切断して航空機の発着をできなくさせ、57年3月には千葉や茨城で国鉄の信号ケーブルを切って28万人の足を奪った。今回も同種ゲリラの発生は必至とみられていた。このため、警備当局は都内で厳戒態勢を敷いていたが、裏をかかれた。」これは11時ごろ警備を緩めちゃっているのですから、もうやったときには緩めているんだから、当たり前のことです。これは何も赤旗が書いているんじゃないですよ。マスコミの社説が書いている。念のために言っておきますがね。マスコミの社説すらこう言っているんですよ。もう事前に18日に国鉄は麻痺する、大混乱を起こすと言っている。彼らの国鉄を麻痺させる手段としては、ケーブルを切断するということを過去にもやっている。それなのに、その裏をかかれている。こういうことに対して警察はどう思われるのか。あなた方は何か共産党を意識して、共産党が泳がしているというように思うかもしれませんが、これを警察の反省の資料に……。(資料を示す)

マスコミがみんなそう言っているんですよ。これを見ますと、75年4月3日の毎日には、「相次ぐ内ゲバ事件がいっこうに解決しない現状から警察の”泳がせ論”もある」こういう意見。赤旗で言っているんじゃないですからね、よく聞いてください。それから78年1月28日の読売には「(内ゲバ事件の反復の)もう一つの疑問は、内ゲバ事件の犯人は、なせ捕まらないのか、ということである。一昨年以来、殺人内ゲバ事件はほとんど未解決である。一般に、わが国の殺人事件の検挙率は高く、過去10年間95%を下回ったことがない。「警察は、過激派を泳がせている」という声すら出ている」、こういういわゆる過激派と称する暴力団の殺人の検挙率というのは何%か、参考に聞かしてもらいたいと思う。読売の社説もこう言っている。著しく下回っている。この中から、警察は過激派を泳がせているという声すらも出ている。

それから、これは各新聞はみんな書いていますから、朝日新聞も言わないと公正を欠きますから、朝日新聞の80年の11月1日付には、「凶悪な殺人事件が繰り返され、それぞれの組織が、公然と犯行声明を出したりしている。それなのに、殺人犯人はなかなか検挙されない。一般市民が納得できない感情を抱いていることは否定できない。警察当局は内ゲバ事件の防止、検挙に全力をあげてもらいたい」、こういう記事が出ているわけですね。67年11月の朝日には、「政府、自民党内部には、三派全学連は規制するよりはむしろ適当に泳がせておいた方がよい、との意見もある」、これは朝日が書いている。もう各紙がみんなこう言っているのですよ。だから世間で不思議に思うのは当たり前ですよ。毎月毎月予告つきの事件が起きていて、1月に3回も起きていて、しかも殺人事件があったり放火があったり、勝手なことをやっていてちっとも検挙しないのですから、それは警察が特別な関係を持っていると市民の方が思うのは当たり前の感情ですよ。

それで、個々の事件でなくて組織的に聞きますが。警察の方はいわゆる中核派に対して捜査のルートか何かあるのですか。向こうの方は警察の動きを全部知っている、あなたの方は何も持っていない、それじゃあなたの方は泳がしていると同じじゃないですか。それはどうなんですか。これは私も前にちゃんと警察の答弁も得ていますよ。

[224]
説明員(警察庁警備局公安第三課長) 鏡山昭典
ただいま新聞などで御指摘いただいたわけでございます。確かにマスコミ等でそういうように書いてございますけれども、マスコミも、警察が泳がしているということではなくて、そういう声があるとか意見があるというようなことでございます。

政府関係者からかつてそういう発言があったということでございますけれども、警察といたしましては治安の維持という立場から、泳がしておるというようなことは決してございません。これは私どももいつも申し上げているわけでございますけれども、一線の警察官はもう命を張って極左対策をやっておるわけでございまして、昭和42年から現在まで11人の殉職者も出しておりますし、2万人近い負傷者も出しておりまして、こういう一線の苦労を考える場合に、泳がしておるということは決してないというふうに私どもは言えると思います。

ただ、問題はやはり捕まえていないじゃないか、こう言われますと、確かに今のところ発生件数に比べまして逮捕というのが非常に少のうございます。その意味では、先ほど先生がお読み上げになりました朝日新聞の中で「一般市民が納得できない感情を抱いていることは否定できない。」というような主張につきましては、私ども謙虚にこれを受けとめまして、今後とも最大の努力で進んでいきたいと思います。

しかし、同時に、11月1日付の朝日新聞の最後の部分に、「内ゲバ事件の根を切るためには、社会が暴力に対する怒りを結集する必要がある。過激派は大学や労組などの内に、活動の根拠地を求めている。そうした場にかかわる人々が暴力集団の凶行を許さないという決意を明確に示すべきだろう。これは社会と反社会集団の戦いである。」というふうにこの社説でも書いてございますけれども、私どもはもちろん最大の努力をいたしますと同時に、国民の皆様方の御支援と御理解を得まして、今後とも極左対策に全力を挙げていきたい、こういうふうに考えております。



[227]
日本共産党 林百郎
だから私先ほど言ったでしょう。11月18日の中核派の機関紙の「前進」で「電車の運行を実力で阻止する」「国鉄線の、千葉県・首都圏的、全国的なストップ」「天井しらずの、激烈な物情騒然たる情勢をつくりだす」、こう新聞に書いてあるのですよ。それじゃ、これは予告でわかるじゃないですか。これに対してどうでも捜査の方法、本部だってあるし何だってあるんだから、中核派には。警察の力をもってすれば幾らでも捜査できるのじゃないですか。

しかもなお問題になるのは、さらに今後もやるとまで言っているのですよ。これは中核派の「軍報」という名前の機関紙ですが、「軍報」の中で中核派は、「今回のゲリラは国の民営、分割化に対する制裁で、今後、国鉄のあらゆる機能を戦場化する」こういう新聞も出ているのですよ。あなた方は警察でこういう情報をとってないのですか。これはあなた、マスコミでちゃんととっている。マスコミがちゃんと載せていますよ、毎日新聞。これをとっていますか。とっているとするならあなたは今後どうするつもりですか、こういう情報が出ているなら。



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日本共産党 林百郎
それでは、これは大臣にもお見せしておりますけれども、歴代の自民党がこう言っているのです。

例えば1967年の10月8日の羽田事件の直後に、当時の官房長官の木村俊夫君が、「羽田事件の対策には強硬な処置をとらないことにした。日共対策上そうした方がいいからだ」

それから1967年11月12日、保利茂君が、「三派全学連は泳がせておいた方がよい。そうしないと全学連は日共系一本にまとまる。その方が危険だ」

それから1969年の5月3日、これは朝日新聞に出ているのですが、中曽根君が、「佐藤内閣をささえているのは反日共系学生だという見方もある。彼らの暴走が、反射的に市民層を反対にまわし、自民党の支持につながる作用を果たしている」

それから昨年の9月19日、自民党本部の放火事件があったときに、浜田幸一君が、「この責任はだれにあるかというと、泳がしていたわれわれにあると思いますよ。「中核派」を泳がしていた。やっぱり法律違反で破壊するものを泳がせた。そういうひとつの政策の誤りがあるんじゃないですか」

歴代の自民党の政党幹部あるいは行政の幹部が背こう言っているのですが、あなたこういうことを知りませんか。

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法務大臣 嶋崎均
今のお話のようなことは全く存じておりません。しかし、いずれにしましても、こういう問題につきましては、この民主主義の社会というものをきちっと維持するというような意味でも断固たる処置をとらなければいけないと私は思っております。