昭和49年10月18日 衆議院 法務委員会

[247]
日本共産党 正森成二
それはあなた方も御承知のように、トロツキスト、中核、革マルといわれておる者がお互いに殺し合いをやり、そして声明を出すというようなことをやっておるということはあなた方は御承知のとおりですね。本年になってから東京都内で何件くらい事件が起こり、何名死者が出ておりますか。

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説明員(警察庁警備局参事官) 半田博
手元にちょっと都内と全国の区別のある資料を持ってまいっておりませんので、全国の数字で申し上げたいと思います。

10月15日現在で、全部の内ゲバでございます。これが210件発生をいたしております。483人が負傷をして10人が死亡しておる。うち365人を検挙しておる。こういうことでございます。

ただいま御指摘のように、その中で、もと同じ派閥であります中核と革マルとの対立抗争事案というのが最も多うございまして、この210件の中で119件はこの両派の対立によるものであります。このうち中核派が革マルを攻撃したというのが61件、また革マルが中核を攻撃したというのが58件、ほぼ半々というふうなかっこうであります。また、これらの内ゲバで中核派が164人、うち死者4人、革マル派に112人、死者5人を出しておりますが、このほか沖縄の琉球大学の中で中核派が革マルの人と誤認をいたしまして殺してしまった、こういう事件が1件ございまして10人、こういうことに相なっております。

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日本共産党 正森成二
そこで私は、そういうようにたいへんな数だということですが、その中でも特に見のがすことができないのは、最近ではお互いに予告をして、そして殺したり重傷を負わしたりしたあと、お互いに戦果を得々として記者会見をしているというような風潮になっております。あるいは機関紙の中でおれたちがやったということを誇示し、あるいはまたやってやるのだということを言っておる、こういう状況になっておりますね。これはあなた方が御存じのとおりであります。

そのうちの幾つかの典型例をあげますと、たとえば9月16日の「革共同通信」というのを見ますと、これでは9月10日に中核派の労働者が革マル派に殺されたことに対して報復を宣言して、「どんな手段に訴えてでも、革命的「等価原則」にのっとった報復を、血の復讐を断固として貫徹する」というようなことを言うておるのですね。あるいは、「高橋同志虐殺は、狭山闘争にたいする反革命的介入などに破産したカクマルの断末魔のあがきである。松崎明をはじめ労働戦線に巣くうすべての反革命分子、全逓カクマルに血の報復を」こういうことを言うておるのですね。特にこの場合は、9月14日に中核の政治局員などといわれておる北小路敏が記者会見をして、そして「高橋同志の報復のためにやった」とか、今後も続けるんだということを言うておる。

これに対して革マルのほうの「解放」という機関紙がありますね。それを読みますと、「わが戦士たちは難なくアジトに突入、高橋の身体に階級的怒りに燃えた鉄槌をたたきこんだ。恐怖に震えて声も出せないこの突撃隊員は右肩、右手首、右足にしたたかな鉄槌をくらって「撃沈」されたのである」こういうことを堂々と書いておるのですね。

そして10月3日にも御承知のように、1日に2つもお互いに殺し合い、傷つけ合うということがありましたが、それについては両方とも記者会見をして、たとえば中核派は、「これは高橋範行の報復第一弾である」今後もやるんだということを言うておるわけですね。まことに傍若無人だといわなければならないと思うのです。

あなた方は、こういうように記者会見をして、みずから認め、さらに予告をするというようなことに対して、法律上の何らかの条文を適用して、これらの記者会見をしている中心人物あるいはその他について規制をなさるおつもりはありませんか。

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説明員(警察庁警備局参事官) 半田博
ただいま御指摘のように、いろいろ彼らの機関紙等の中にそういった予告でありますとかいうふうなものが出ておるわけでございますが、ただ、現実に捜査をしていく場合には行為者を特定しなければならないわけでございます。そういう点で行為者の特定ということになりますと、たとえば最近はそういうところに捜索をしましても、捜索場所を転々と変えておる、原稿が入手をできない。これはやっておるのでございますけれども、なかなか行為者の特定ができないというふうなことでございます。そういうふうなことでいろいろいま知恵をしぼって考えておるわけでございますけれども、そういった一般的な形では出るのですが、個々の事件を立件するという段階になると非常に困難が伴っておるというのが現状でございます。

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日本共産党 正森成二
いろいろ刑法上の措置をとるには困難な点もあると思いますけれども、ここまで傍若無人なことをやっておる場合に、たとえば殺人の予備という条文もありますね。これは殺人の教唆ということですと、共犯従属性説の立場に立てばこれは非常に厳密な要件が要りますが、殺人の予備ということになれば、予備ですから、まだ実行されていないわけですから、これは刑も軽いかわりに構成要件も比較的ゆるやかである、こういうようになっておりますね。ですから、あなた方がおやりになるつもりであれば、あなた方が情報を得られておるのは日本共産党の情報だけではなしに、このような集団についての情報も得られておると思うから、できないことはないと思うのです。それをなさらないというのは、あなた方がこれらの人々を泳がせるという方針をかつてとられたことがあると私どもは考えております。そういう続きがまだ残っておるんじゃないかという重大な疑いを持たざるを得ないのですが、そういうことはありませんか。

[252]
説明員(警察庁警備局参事官) 半田博
殺人の教唆という問題につきましては、ただいま御指摘のように、従属性説に立ちますとなかなかむずかしい問題がございますということでございますが、泳がせているのではないかというおことばでございますけれども、私どもといたしましても、極左暴力集団のために多数の警察官の血を流しております。したがいまして、私どもはそのような考え方は全くございません。一生懸命やっておるつもりでございます。

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日本共産党 正森成二
いま一生懸命やるというようなお話でしたから、そういう立場でしかるべくやっていただきたい、こう思います。

ただ、私はあえてそういうことを言いましたのは、あるいは残念でお気にさわったかもしれませんが、歴史的沿革を申しますと、非常に言いにくいことですが、かつてわれわれの同僚議員の保利茂氏が、「三派全学連は泳がせておいたほうがよい」こういうように公言されたことは公知の事実であります。また、中曽根通産相が「佐藤内閣をささえているのは、反代々木系学生の暴走だという見方もある。彼らの暴走が、反射的に市民層を反対にまわし、自民党の支持につながる作用を果している。」これは1969年5月3日付の朝日新聞であります。こういうように報道されております。

あなた方はやはりそういう政府の統制下にあるということをわれわれとしては考慮せざるを得ない。しかも、あなた方自身、60年安保闘争の当時に、唐牛健太郎などのトロツキスト幹部があなた方の小倉警視総監らと会っておったというのは厳然たる事実であります、本人がテレビで言うているのだから。また、アナーキストの背叛社があなた方のある警部を通じて資金供与を受けていたということも同事件の裁判で明らかになっております。

ですから、あなた方がこれほどの爆弾事件やあるいはお互いの殺し合い事件、そしてまたあなた方警察官も多数負傷されるということについて、泳がせるというようなことはないと万々信じたいけれども、しかし過去にそういういきさつがあったから、痛くもない腹を探られないようにということを言っているわけで、あなた方としても厳に、警察法にいう公正、公平な厳然たる態度をやはりとられるようにあえて注文しておきたいと思います。そして成果をあげていただきたい、こういうことを私どもは期待しておきたいと思います。