反帝学評

昭和47年06月06日 参議院 文教委員会
[208]
日本共産党 加藤進
そこで、もう一つ具体的に聞きます。これは警察庁も御存じのことだと思いますけれども、暴力集団の一つである反帝学評というのがあります。その拠点校は神奈川大学です。この神奈川大学では一体いまどういうことが起こっているのか、この点を私は文部省の管理局長からお聞きしたいと思います。

[209]
政府委員(文部省管理局長) 安嶋彌
神奈川大学の最近の状況でございますが、大学からは特に正式な御連絡はございません。したがって、大学の現状がどういう形になっておるかということは詳細承知をいたしておりません。

[210]
日本共産党 加藤進
御存じないというお話でございますから、まず御説明を申し上げなくてはならぬと思いますが、神奈川大学は反帝学評の暴力支配の拠点になっています。暴力を否定したからという理由だけで、大学の理事長、学長代行をはじめとする14名の職員は学校にさえはいれない事態にあります。御存じでないでしょうか。

もう一つ、この反帝学評は、大学の寮を占拠しています。寮は彼らの根城です。いわば出撃の基地になっているんですよ。(「ベトナム戦争だ」と呼ぶ者あり)全くそのとおりです。この前も、9名の学生が、なぐる、けるの暴行を受けました。

そこで、私は、管理局長にお尋ねしたいけれども、あなたは少なくとも本年の1月末にこうした学内事情について大学当局から説明を受けられたはずですけれども、そういう事実はないでしょうか。

[211]
政府委員(文部省管理局長) 安嶋彌
1月の24日でございますが、神奈川大学の理事長、学長の交代がございまして、新理事長の長倉保氏と学長事務取扱の宮川武雄氏が私のところにごあいさつに見えられまして、よろしくということでお帰りになったわけでございますが、そのときどういう話があったか、実は正確に記憶はいたしておりません。ただ単なるごあいさつではなかったかと私は記憶をいたしております。

[212]
日本共産党 加藤進
それは少し納得できません。大学の理事会が本年1月末に現在の安嶋管理局長に会い、学内の暴力支配の実態を報告しているということを私は聞いています。また、学長代行から詳細な大学の実態報告書が提出されているはずです。

これに対して、安嶋管理局長自身がこう言っています。こんな例は全国にはない、全く重大問題である、文部省としても検討して早く対処したい、こう言われておると私は聞いておりますけれども、これも事実無根なんでしょうか。

[213]
政府委員(文部省管理局長) 安嶋彌
1月の24日に新理事長がごあいさつに見えたわけでございますが、その前に、前理事長の安井さんであったかと思いますが、その方が退任のごあいさつに見えまして、そのときに神奈川大学の状況について御報告がございました。学内に学生教職員等の間に各種の対立紛争があって正常な運営に難儀をしておるという御報告がございました。

しかし、これは私立大学でもございますし、私も非常に憂慮すべき事態だとは思いましたけれども、具体的にこれに対して文部省がどうこうするという立場ではございません。前理事長には、非常に憂慮すべき事態であるけれども、大学自身として力を尽くしてその解決に当たっていただきたいということを申した記憶がございます。

[214]
日本共産党 加藤進
話になりませんね、それでは。事態は大体文部省は御存じのはずです。存じておられながら、いま御答弁のあった程度の処置さえやっていない。これはどういうことでしょうか。無責任と言っていいのじゃないでしょうか。こんな事態で、いわばテルアビブの空港問題に端を発して大学当局を叱吃激励されるような文部省が、この問題について責任ある態度をとっておられると言えるのでしょうか。

私は、ここで、いまこの大学がどんな事態になっているかということを若干申し上げます。これは特に警察当局の方にもお聞き願いたいと思いますけれども、神奈川大学で暴力支配を行なっている反帝学評の幹部の連中に対して、警察当局自身がすでにこういう態度をとっています。この幹部の連中にはちゃんとした逮捕歴がいろいろあります。ですから、警察はみんな知っています。

たとえば、Tというのは、現在の自治会の委員長で3年生、これはかつて青山学院前で逮捕された、そしてすぐに出された。出されてまた逮捕される。こうして出されて、今日学内で暴力行動を続けています。

Iというのは、寮委員で全共闘の議長です。そして反帝学評の幹部です。3度まで逮捕を受けているが、ほとんど3日間以内に出所している。去年の11月、大学のロックアウト中に火炎びんを投げて逮捕されたが、そのときも1日で出所をした。その後も学内で暴力行為が続いているわけです。これは一体どういうことなんでしょうか。

まだあります。Tという男、これは前自治会委員長です。そして、反帝学評の幹部です。早稲田事件のときに機動隊に石を投げつけて、そして未必の故意で指名手配中です。指名手配中のこの学生が、ちゃんと大学の中であばれ回っているのです。しかし、逮捕されておらぬ。

もう一人のCという男、これは全共闘の幹部で、反帝学評の幹部です。数回逮捕を受けて、いつも1日か2日で保釈されている。44年の8月、火炎びんを投げて逮捕されたそのときは、その日のうちに出されています。

こういう一連の具体的な事実があるのです。警察は、毎日このような暴行を働いておる学生を取り締まっておるのかどうか、これは警察庁のほうからお聞きをしたい。どうしているのですか。

[215]
説明員(警察庁警備局参事官) 丸山昴
ただいま神奈川大学の関係でそれぞれ各個々人について具体的な事例をあげて御説明がございましたけれども、私ども、あいにく手元にその資料がございませんので、一般論としてお答えを申し上げたいと思います。

ただいまの御説明の中で、幾日勾留をして釈放になっていると、こういうお話でございますが、釈放は、これは裁判官の権限でございます。要するに、勾留の必要性を認められない場合に保釈になっておるのでございまして、警察が故意に放置しておるということではございません。それから勾留の必要がない者については、もちろん警察が独自に保釈をすることもございます。

それから指名手配されておる者がつかまっていないということでございますが、これは、もし指名手配でございましたら、これは当然逮捕すべきものでございまして、その辺の事実関係については、よく調査いたしませんと、はっきりしたことは申し上げられないと思います。



[222]
日本共産党 加藤進
このような学生に対する態度をただしておるわけですけれども、これらの学生諸君は、武器から権力が生まれるということを思想信条として、もうすでに国内各地ばかりでなしに、外国までいわば殺人者としての助っ人に出ておるわけでしょう。驚くべきことですよ、これは。こういう事態が文部当局の指導管理を行なわなくてはならない大学の内部に起こっておる。だからこそ私たちはこの問題を重視しなくてはならぬと思う。治安問題ではありますけれども、同時に、これが教育問題と関係する。大学と直接関係がある。その意味では、私は、治安問題だから警察当局にまかしておいて私は知らぬなどというような態度は絶対に許しがたいと思います。

なおいろいろ申し上げたい資料がたくさんありますけれども、問題の中心はどこにあるかというと、大学に籍は置いているけれども、その考え方と行動から見て大学の中における構成部分ではもはやないような一団の暴力集団が存在する。彼らは大学の施設をかってに占拠する、破壊も彼らの思うまま、大学の教職員さえ近づけない、そして大学を根城にしていわば大学の外における彼らの破壊活動や暴力行動を行なう、これが現状でございますから、この問題に対する断固とした態度をはっきりとさして、これに対する対処を文部省としても行なわなくてはならぬし、言うまでもなくそのことは大学当局との十分な話し合いを通じて大学当局みずからをも叱咤激励してそのような方向を示さなくてはならぬ、こういうことを私は強く要求しておるわけでありまして、本来、こういう問題について、これは大学の新しい立法をつくって大学の管理運営全体を変えなくてはならぬなどというような問題に飛躍させることは最も誤りである。

問題は、目の前にある犯罪暴力学生に対してどのようにこれが蠢動するような事態に対処していくか、取り締まるか、こういう問題として私は提起しておるわけであります。もちろん、教育の部署にあるわれわれでございますから、一個一個の青少年に対して十分な指導も善導もしなくてはならぬことは、言うまでもありません。しかし、犯罪を犯し、しかもこれに何らの反省も加えることなく何度も何度も犯罪を繰り返しつつ今日に至っている凶悪な学生の集団でございますから、この問題については、いま一度文部省は認識を改めてこれに対する処置に対して誤りないような努力をしていただかなければならぬ、このことを私は強く要求いたしますが、その点はいかがでしょうか。

[223]
文部大臣 高見三郎
お話しまでもなく、私どもは、大学に対しまして強い反省と強い態度を望んでおるのであります。先ほども申し上げましたように、長期留年なんというようなことはなるべく少なくしなければならぬ。今度の事件などを見ましても、留年8年というような学生がおります。その学生を一体大学は今日までどうしておったのかということになりますると、私は非常に問題があると思います、その点には。加藤先生おっしゃるとおり、私もその問題については非常な情熱をもって当たっておるつもりでおります。

ただ、問題は、そういうことがあるから文部大臣の権限を国家権力をやたらに強いものにするということは極力避けなければならないということが私の基本的な考え方であるということだけは御承知をいただきたいと思います。