昭和50年06月18日 衆議院 法務委員会

[200]
日本共産党 諫山博
ことしの5月14日午後0時15分に金沢大学で内ゲバ事件が起こりました。トロツキスト暴力分子の内ゲバ事件というのはもう余り珍しくなくなりましたが、それでも一つ一つの事件を分析するときわめて重大な内容が含まれています。

この事件の簡単な経過を説明しますと、5月14日午後0時15分ごろ、金沢大学教養部校舎南側道路北端付近で、金沢大学の生協に巣くっている革マルの学生約20名に対して中核派の連中約10名が襲いかかって乱闘状態になりました。襲いかかった中核派の服装は、顔をストッキングで覆面する、白手袋をつける、鉄パイプを手にしている、こういう状態であります。乱闘は数分間で終わりましたが、時間が昼休みの直前で、多数の学生や教職員がこの様子を見ております。革マル派の学生は、道路に倒れた中核派の学生1人を放置し、他の中核派の2人を捕らえて、一般学生に向かって、これが中核の殺人犯だ、われわれはこれを粉砕した、こう絶叫し、そこで負傷者も発生しております。

こういう事件が起こったことがあるのかないのか、文部省、いかがですか。

[201]
説明員(文部省大学局学生課長) 十文字孝夫
先生お話しのとおり、確かに、5月14日午後0時15分ごろ、教養部の構内広場で昼休みの集会の準備をしておりました革マル系と見られる約20名の学生集団に、中核系と思われる学外者約10名が鉄パイプを持って襲いかかりまして、双方乱闘となり、中核系の学生3名が負傷し、2名が逮捕された、そういう事件があったということで、大学当局から報告を受けております。

[202]
日本共産党 諫山博
もう少しその後の経過を説明しますと、0時20分ごろ教養部の学生課長が駆けつけました。そのときはもう乱闘は済んでいます。学生課長は女子職員に救急車を呼ぶように命じて、0時35分に1人の男が救急車で病院に運ばれました。大学が県警本部を通じて中警察署の警備課に通報したのが0時30分ごろです。そうして0時35分ごろ、中署の私服警察官約10名が現場に到着しています。こういう事実はあったかどうか、文部省はいかがですか。

[203]
説明員(文部省大学局学生課長) 十文字孝夫
先生お話しの、大体概要としてはそういうような状況であったというふうに報告を受けております。

[204]
日本共産党 諫山博
そこで文部省に質問します。

学外から金沢大学の中に攻め込んで殴り込みをかけた中核派の連中は何名だったのか、どういう素性の人物だったのか、わかりますか。

[205]
説明員(文部省大学局学生課長) 十文字孝夫
学外者からの中核系と思われる集団は約10名でございます。それがどういう身分の者であるかということについては、大学当局としても把握いたしておりません。大学当局に聞いたところでは、学内者ではない。

現にこの乱闘事件におきまして負傷した者の氏名が2名ほどわかっております。1人は新谷宏という者で、元金沢大学の学生でございまして、現在は金沢大学の学生ではありません。それから秋山和雄という元明治学院大学の学生、その2名はわかっております。

[206]
日本共産党 諫山博
最初の説明で中核派が約10名と説明されたのに、ことさら人数を聞いたのは、約ではなくて正確な人数を把握しているかどうかを知りたかったからです。

中核派の連中が学外の者だということはわかっているわけですが、これがどこのどういう人物であるかということをつかまなければ対策は立てられないと思うのですが、これはわからないままですか。

[207]
説明員(文部省大学局学生課長) 十文字孝夫
何分にも事件はほんの2~3分間の出来事であったようでございまして、中核派のグループはその後逃亡いたしておりまして、大学当局としてはそれが何者であったかということは確認できないでおります。

[208]
日本共産党 諫山博
警察庁の森永参事官に質問します。

私が説明したような事件が5月14日、金沢大学で発生したことは承知していますか。

[209]
説明員(警察庁刑事局参事官) 森永正比古
そのような事案が発生したことは承知しておりますけれども、詳細につきましては、所管が違いますので警備局の方から説明さしたいと思います。

[210]
日本共産党 諫山博
警察庁の柴田公安第三課長に質問します。

金沢大学に殴り込みをかけた中核派の連中は何名だったのか、どういう人物だったのか、警察ではつかんでいますか。

[211]
説明員(警察庁警備局公安第三課長) 柴田善憲
金沢大学に殴り込みをかけた中核派は10名ぐらいであったようでございますが、正確な数字は、現在捜査中でございましてまだわかりません。

ただ、その中で3名の者はわかっております。2人は逮捕いたし、1人は指名手配をいたしておる状況でございます。それによりますと、いま御説明がございましたように、1人はかつての金沢大生、1人は明治学院大生、1人は芝浦工大中退の者のようでございます。

[212]
日本共産党 諫山博
一緒に殴り込みをかけたのですから共同の組織に属しているのじゃなかろうかと思うのですが、彼らの根拠地はどこであり、どこから殴り込みをかけたのか、わかりますか。

[213]
説明員(警察庁警備局公安第三課長) 柴田善憲
一緒に参ったわけではございますが、彼らの本拠地がどこであるか、あるいは彼らが皆同じ組織に属しておる者であるかどうか等はいずれも捜査中でございまして、現在までに判明いたしておりません。

[214]
日本共産党 諫山博
どこから殴り込みをかけてきたのですか。殴り込みの出発地。

[215]
説明員(警察庁警備局公安第三課長) 柴田善憲
現在までに判明いたしておりません。

[216]
日本共産党 諫山博
文部省に質問します。

この事件での負傷者は、さっきのお話しでは殴り込みをかけた中核派側3名、殴り込みをかけられた革マル側にはない、こうなりますか。

[217]
説明員(文部省大学局学生課長) 十文字孝夫
私どもが大学の方から報告を受けている限りでは、中核系の学外者3名のみということでございます。

[218]
日本共産党 諫山博
警察は、負傷者についてはどういう掌握をしていますか。

[219]
説明員(警察庁警備局公安第三課長) 柴田善憲
負傷は、いま文部省の方からお話しのように中核が3名のようでございます。ただ、かけられた方の革マルに1人軽傷者があるのではないかということで調べておりますが、確認に至っておりません。

[220]
日本共産党 諫山博
この事件で、その日のうちに直ちに警察による実況見分が行われ、多数の証拠物件が押収されているようです。私の調査によれば、鉄パイプ、長いもの短いものさまざまで合計20本、ヘルメット1個、血痕つきガーゼマスク6枚、軍手3組、覆面用ストッキング11枚、ゲバ棒を巻いた金大自治会旗1枚、そのほかとなっていますが、こういうのが事件当日押収されていますか。

[221]
説明員(警察庁警備局公安第三課長) 柴田善憲
押収物件について申し上げます。

当日実況見分をやりまして、11件、152点の証拠資料を押収いたしております。主なものは、鉄パイプが19本でございます。それから鉄パイプを携帯するためのサックが2個、それからはだ色のナイロンストッキングが11枚、白マスクが6個、それから軍手が6双ということになっております。それから金大の自治会旗1枚、これは鉄パイプを巻いておったそうでございます。以上のようなものが主なものでございます。



[240]
日本共産党 諫山博
そこで警察にもう一遍。これは当然犯罪行為になるわけですが、警察としては、殴り込みをかけた側にはどういう犯罪が成立するという立場をとっているのか、殴り込みをかけられた革マル側にはどういう犯罪が成立すると見ているのか、現在の認識を説明してください。

[241]
説明員(警察庁警備局公安第三課長) 柴田善憲
殴り込みをかけた側でございますが、これはまず凶器準備集合罪、それから、けがをしておる事実が確認できませんが、もし確認できれば傷害罪、さらに、集団で暴行を働いておりますので、暴力行為等処罰ニ関スル法律違反等の適用がある事態であろうというふうに考えております。

また、反撃をいたした状況、これは実は警察部隊が行きましたときにはすでに事態がおさまっておりましたので警察はその事態を把握いたしておりませんが、反撃をいたしました側にも傷害、あるいはいま御指摘のように鉄パイプ等を使っておるとすれば、いまの状況ではどうやら旗に包んであったようでございますが、凶準的な状況があったのかどうか等の観点を含めて現在捜査中でございます。

[242]
日本共産党 諫山博
殴り込みをかけた側には住居侵入罪というのは問わないのですか。一般にこういう場合はどういう取り扱いをしていますか。

[243]
説明員(警察庁警備局公安第三課長) 柴田善憲
建造物侵入罪を問う事態もあろうかと思います。今回の場合は建造物侵入罪も問える事態ではないかと思っております。

[244]
日本共産党 諫山博
殴り込みをかけた側では被疑者が何名であり、殴り込みをかけられた側は被疑者が何名なのか、御説明ください。

[245]
説明員(警察庁警備局公安第三課長) 柴田善憲
殴り込みをかけましたのは先ほど申し上げましたように10名くらいであったようでございます。ただそのうちの3名だけしか現在判名しておらない。そういう意味では被疑者は3名ということになりますが、その他に7名前後の者がおるということで捜査をいたしておるわけでございます。

また、殴り込みをかけられた側、これは事態がおさまった後へ参りましたものですから、そのときの応戦の状況等がはなはだ不分明で捜査はなかなかむずかしい点があるのでございますが、当時20名くらいがおったということのようでございますので、そういう観点から捜査を進めておるわけでございます。

[246]
日本共産党 諫山博
この事件は、白昼、大学の中で、衆人環視の中で行われたわけです。警察は、殴り込みをかけられた側、これも当然犯罪が成立すると見ているようですが、本気で被疑者として責任を追及するつもりですか。

[247]
説明員(警察庁警備局公安第三課長) 柴田善憲
被疑者としての責任を追及すべく目下鋭意捜査中でございます。



[284]
日本共産党 諫山博
これは金沢大学にとっては非常に大きな事件でして、金沢大学は決してこれが初めてではないのです。たとえば昨年の11月28日、「生協を明るくする会」の代表が生協に巣くうトロツキスト暴力集団から集団暴行を受けたという事件があります。ことしの3月2日にも、同じトロツキストが教養部学生2名に暴力をふるっております。学生1名は全治1週間という傷を受けております。そしてこういう問題に警察からも大学からも適切な措置がとられないまま、このたびの事件が起こったわけであります。

しかし、このたびの事件では、もう学生はがまんできないというので決起をいたしました。そして、暴力学生の拠点とされていたのは生協ですが、この生協民主化運動が起こったわけです。トロツキスト暴力学生、革マル派の学生理事の10名に対してリコール運動が始まりました。そして総代会には定数132名の総代のうち126人が出席するという状況の中で、革マル派の全理事一人残らず解任決議されました。そして、生協の総代会の後で「暴力を一掃し豊かな学園を目指して」という決議が採択されております。

私は、金沢大学の学生や教職員がみずからの力で暴力追放を闘い取り、生協の民主化を闘い取ったということはすばらしいことだと思います。しかし、学生のやったこと、教職員のやったことはすばらしいことですが、これに対して警察あるいは文部省のやったことは何だったのかということで反省を求めたいわけです。警察や文部省が泳がせ政策を続けたにしても、いずれ民主勢力はこういう連中を放逐すると思います。このことは金沢大学で証明されているわけです。しかし、こういうことを文部省とか警察当局が余りにも軽々しく見たり甘く見たりしてはいけない、もっと本気で取り組めということが私の言いたいことです。

この問題については以上で質問を終わります。