昭和50年12月11日 衆議院 決算委員会

[096]
日本共産党 諫山博
そこで、今度は少し観点を変えまして、殺人ではない傷害事件、凶器準備集合罪、こういう問題について幾つかの点を質問します。

殺人以外はほとんど一般のマスコミでも報道されていませんから、特殊な人にしか知られていないわけです。それでも「前進」だとか「解放」というような彼らの機関紙を読みますと、何名やっつけた、どういう重傷を負わせたというようなことがしばしば載っております。

そこで、その一つのタイプとして、やはりある組織の者が他の組織の者を襲撃する。そうすると、襲撃された側が今度は加害者に復讐する。今度は逆の復讐をするというようなことが繰り返されているわけですが、その一つのかなめになるのに、昨年9月10日に起こった高橋範行殺害事件というのがあります。高橋範行は東京中央郵便局に勤めていて、東京中央郵便局の中核派の活動家であります。そして、去年の9月10日未明に襲われて、その月の16日に死亡しています。襲撃の状況を襲撃側の49年9月30日付「解放」という機関紙で、次のように報道しています。

「わが戦士たちは難なくアジトに突入、高橋の身体に階級的怒りに燃えた鉄槌をたたきこんだ。恐怖に震えて声も出せないこの突撃隊員は右肩、右手首、右足にしたたかな鉄槌をくらって「撃沈」されたのである。」「この高橋なる男は、」「東大生四宮・富山両君を虐殺した下手人であり、7月25日の戦闘的自治体労働者への襲撃をはじめとして、たたかう労働者学生への反階級的な武装襲撃の数々を直接担ってきた男であり、その罪業は許すべからざるものである。」こういう記事が出ていますが、この高橋範行殺しでは被疑者が何名いるのか、逮捕者が何名いるのか、そして何名が起訴されたのか、警察の方から説明してください。

[097]
説明員(警察庁警備局公安第三課長) 福井与明
昨年の9月10日に警視庁の尾久署の管内で起こりました事件でございますが、御説明いたします。

[098]
日本共産党 諫山博
ちょっと待ってください。委員長、私、限られた時間でたくさんのことを聞きますから、事件の内容は説明要りませんから、被疑者が何名か、逮捕者が何名か、起訴者が何名か、これに限って説明させてください。

[099]
委員長代理 森下元晴
簡明にお答え願います。

[100]
説明員(警察庁警備局公安第三課長) 福井与明
被疑者は数人ということでございます。地取り捜査、現場鑑識活動等を通じまして、鋭意捜査を進めておりますが、現在のところ検挙者を出すに至っておりません。

[101]
日本共産党 諫山博
被疑者数名の氏名、所属は判明していますか。

[102]
説明員(警察庁警備局公安第三課長) 福井与明
実は、先生御案内のように、革マルの場合は、43年の同派の黒田議長が出した「日本の反スターリン主義運動」の中でも、当面マル生労働は組織化しないという方針を決定したと言っています。したがいまして、労働者部分の、ことに全逓と限った形で見てまいりますと、大変把握しがたい実態でございまして、本件につきましても、被疑者の氏名等は残念ながらわかっておりません。

[103]
日本共産党 諫山博
この事件で、中核派の上部団体である革共同政治局員の北小路敏が東京で記者会見をしております。そして、高橋範行殺害について報復の宣言をしているはずです。新聞の報道では「10日未明、中核派の労働者が革マル派に襲われ重傷を負う事件があった。これまでの暗黙の境界線を向こうが先に破った以上、彼らの血であがなってもらう」こう言って「“全面戦争突入”を予告した。」新聞の報道によれば「両派の抗争が今後一層深刻化しそうだ。」こうなっております。

北小路敏が記者会見をして報復宣言をしたことがあるのかどうか、警察、どうですか。

[104]
説明員(警察庁警備局公安第三課長) 福井与明
当時、そのような記事が報道されたことについては承知しておりますが、実際に彼らがやった場面を、こちらが入っていって直接に現認するわけにはまいりませんので、あくまでも報道等により間接的に把握している、かような状況でございます。

[105]
日本共産党 諫山博
北小路敏が報復宣言をする、しかも記者会見まで行って報復宣言をする、これはその後の一連の事件にとってきわめて重大な出来事のはずですが、そういう記者会見があったのかなかったのか。あったとすれば、どのような報復宣言が行われたのか。警察は調べましたか、調べていませんか。

[106]
説明員(警察庁警備局公安第三課長) 福井与明
記者会見の場には、警察官が直接入ってまいることは残念ながらできない状況でございます。したがいまして、記者会見の場に臨んだ方から協力を得て内容を把握するわけでございますが、これもニュースソースの秘匿ということがございまして、ことに報道関係者の場合、いわゆるニュースソースを明らかにする形での御協力は得られないという限界があるわけでございますので、私たちの承知しておるのは、そういう範囲での御協力を得て把握しておる内容である、こういうことでございます。

[107]
日本共産党 諫山博
法務大臣、北小路が報復宣言をした、この報復宣言に基づいて次々に犯罪が行われているわけです。いまの話では、まともな捜査をしていないでしょう。

もう一つ聞きます。

9月24日に日比谷公園で、解同朝田派と中核派を中心としたトロツキストが、狭山裁判を理由として集会を開いております。ここで、中核派全学連委員長と名乗る松尾真という男が同じような発言をしております。「私たちは昨日、反革命集団の頭領、前川を撃沈した。」これは全逓中郵の戦闘的労働者、同志高橋範行の虐殺に対する報復である、こういうあいさつを公然と集会の中でしていることが報道されていますが、警察は調査しましたか。

[108]
説明員(警察庁警備局公安第三課長) 福井与明
さような彼らの自認声明があったということを報道された内容は承知しておりますが、ただ残念なことには、いわゆる中核派がやったということを言っておるわけでございまして、何のたれべえがやったということは、言っておらないわけでございます。

従来もかような自認声明を捜査の材料にしまして、たとえば3月14日の本多前進派書記長の殺害事件に関しましては、当日革マルの方で自認声明をいたしましたので、これらを材料にいたしまして、革マルの拠点であります解放社の捜索をしております。

また6月24日の静岡県の宇佐美「緑の村」で起こりました、革マルが反帝学評を襲ったと思われる事件につきましても、7月7日に「解放」紙上で革マルが自認声明をいたしましたので、これらを材料にいたしまして、7月14日に解放社、創造社の捜索をしておりますが、残念ながら、この自認声明はあくまでもセクトとしてやったということでございますので、鋭意捜査に努めておりますが、それだけで、いきなり犯人検挙といった形での捜査活動は、残念ながらとられないという実態でございます。

[109]
日本共産党 諫山博
これだけの犯罪宣言が行われているのに、実態をつかめませんというのは、私は納得できません。

そこで、高橋範行が殺された、それに対して北小路たちが報復宣言をした、この報復宣言に基づいて起こったのが10月3日の山崎洋一殺害事件です。

朝日新聞の報道によれば、4人組が襲撃した。ヘルメットが2個犯罪の現場に落ちていた。そして、このときも北小路が記者会見をして、高橋報復のためにやったのだということを公言した。この事件で、1人は起訴されていると聞いていますが、捜査状況はどうなっていましょうか。法務省、どうですか。

[110]
政府委員(法務省刑事局長) 安原美穂
御指摘の事件につきましては、1人の犯人の検挙、送致を受けまして、殺人、兇器準備集合で起訴、公判請求済みでございます。

[111]
日本共産党 諫山博
この事件について、襲撃側の「革共同通信」という機関紙には、次のようなことが書かれております。

「虐殺主謀者・全逓カクマル幹部山崎洋一を完全せん滅」説明として「高橋同志虐殺への激しい怒りをこめて鉄パイプを炸裂させた。たちまち血まみれとなり卑劣にも助けてくれ! と懇願するこの反革命分子に渾身の力をふりしぼって一撃また一撃、憎しみの鉄槌を肉体奥深く叩きこみ反革命のドス黒い血の海に沈めたのである。」中略「目には目、歯には歯を! の復讐の原則は厳粛に貫徹されるのだ。」これだけのことが書かれ、朝日新聞などでも、4人組が襲撃した、ヘルメットが2個現場に落ちていた、こういうことが書かれているのですが、検挙は何名でしょう。

[112]
説明員(警察庁警備局公安第三課長) 福井与明
お答えいたします。

本件につきましては、1月の13日に1名と、それから5月の15日に1名の、2名検挙いたしております。

[113]
日本共産党 諫山博
法務省では、送検を受けたのは1人で、起訴したのは1人という説明をしていますが、もう1人はどうなったのですか。

[114]
政府委員(法務省刑事局長) 安原美穂
私の手元の資料では1名の受理というようになっておりますが、警察の御説明を受けますと、たしか送致を2名受けているということになっておりますので、恐らくそれが正しいと思います。と同時に、警察当局からいま内々聞きますと、処分保留で釈放だということでございいますので、それも恐らく私は正しいことだと思います。

[115]
日本共産党 諫山博
私は事前にこの事件の処理がどうなっているかを調査していただくようにお願いしていたのですが、事件は殺人ですから、起訴猶予ということはなかろうと思います。そうすると、人違いの送検ということだったのかどうか。この点は、私が質問している間でいいからちょっと調べてください。――わからなければ、私の質問が終わるまででいいですから調べてください。

[116]
政府委員(法務省刑事局長) 安原美穂
担当の者の説明によりますと、起訴猶予ではもちろんなくて、むしろ殺人、凶器準備集合として起訴するに足る嫌疑がまだ十分でないというので、拘束期間満了のために釈放して処分が保留であり、現に捜査中であるという段階であります。

[117]
日本共産党 諫山博
これもようやく1人処理されたというだけのようですが、ところで、この事件で北小路敏についてはどのような捜査をし、どのような結論になったのか、警察が説明してください。

[118]
説明員(警察庁警備局公安第三課長) 福井与明
委員御案内のように、機関紙で声明をしておるということになりますと、われわれのセクトがやったということで犯人が特定してないことに加えまして、もう一つ、その内容をだれかが機関紙に執筆したということで、証拠的には間接的になるわけでございます。したがいまして、そういうものを材料にしまして鋭意追及はしてまいっておりますが、残念ながら、そのことを材料にして検挙する、そういうことはできておらない、こういう段階でございます。

[119]
日本共産党 諫山博
私は法務委員会でも、たくさんの機関紙の記事を挙げて、これだけの犯罪予告が行われ、これだけ犯罪を誇示しているのに、どうしてこれが検挙できないかということを質問したわけですが、だれが執筆したのか、だれが印刷したのか、だれが取材したのか、こういうことは警察は調べていますか。調べていないのですか。それとも、調べてもわからないのですか。

[120]
説明員(警察庁警備局公安第三課長) 福井与明
もちろん捜査の一つの材料でございますから、それをもとにしまして、そういう点についても捜査をいたしております。さっき申し上げましたように、そういうものを材料にして幾つかの件について捜索等を行っているわけでございますが、それをもとに、いきなりある人物を検挙、そういう形で捜査結果が結びつくようなことには残念ながら至っておらない、かようでございます。

[121]
日本共産党 諫山博
私は納得できませんが、山崎洋一が殺された、それに対して今度は革マル側から再び報復宣言が行われて、次々に中核派が襲撃されるということが繰り返されるわけですが、私たちの機関紙による調査によると、10月27日、渡辺正隆というのが襲撃されています。そういう事件があったのかなかったのか。あったとすれば、犯人は検挙されたかどうか、それだけを説明してください。

[122]
説明員(警察庁警備局公安第三課長) 福井与明
これは昨年の10月27日に発生した事件でございますが、都内の杉並区のアパートに就寝中に襲撃をされて、被害者がそれを察知して窓の外に逃げ出したために被害を免れた、かような事案でございます。

[123]
日本共産党 諫山博
これは犯罪になりますか、なりませんか。

[124]
説明員(警察庁警備局公安第三課長) 福井与明
もちろん犯罪になるわけでございまして、現場に遺留されておりました鉄パイプ等をたどりながら、現在捜査をしておる段階でございます。

[125]
日本共産党 諫山博
捜査をしている段階というのは、いまなお検挙いたしておりませんということのようですが、その次に、11月16日、大沢猛というのが襲われております。こういう事件があったかどうか、そして犯人の検挙はどうなっているか、説明してください。

[126]
説明員(警察庁警備局公安第三課長) 福井与明
これは警視庁の蒲田署の管内で起こった事件でございますが、被害者が全逓空港支部臨時大会に参加しようとして犯行地付近を通りかかった際に不審者を認めて、その不審者を呼びとめようとした際に、逆に手拳で殴打されたという事案でございます。

これにつきましては被害者側は、事情聴取はもちろん、被害届の提出等一切の警察に対する協力を拒んでおりますけれども、警察としては捜査をしておる段階でございます。

[127]
日本共産党 諫山博
彼らの機関紙によれば、事件が起こったのは午後1時ごろです。そして被害者には2人の人が同行していたとなっております。犯罪の模様を彼らの機関紙「解放」は次のように書いています。

「この一瞬をとらえ、待機していたわが戦士たちは一挙に大沢目がけて突進した。泡をくった大沢は、うろたえながら助けを求める。だが十全の体制をとって待ち構えていたわが部隊の存在にすら気づかない防衛隊に何ができよう。大沢がタックルされ、叩き伏せられるのを眼のあたりにして「カクマルだあー、110番だ、110番だ、すぐ電話しろ!」と叫び、悲鳴をあげながらつんのめりうろたえる防衛隊を、わが戦士たちは大沢もろとも粉砕しさったのである。」公然と道路上でこれだけのことが行われ、しかも事件後犯罪を誇示しているのに、犯人のめどさえつかないのですか。どうですか。

[128]
説明員(警察庁警備局公安第三課長) 福井与明
被害者はもちろんでございますが、関係者も、これは労働者同士の口論であるということで、警察に対する事情聴取を一切拒否している段階でございます。したがいまして認知も、たまたま通りかかった人の通報によって警察が知ったわけでございます。

そういうことで被害者側の協力が全く得られないということで捜査には苦慮しておりますが、悪条件の中で鋭意捜査しておる、かような段階でございます。

[129]
日本共産党 諫山博
通行人が見ているのですよ。午後1時ごろ人通りの多い道路上で行われた犯行で、鋭意捜査中ということでは、私は了解いたしません。

その次の日、11月17日、唐沢伸一という人が襲撃されているはずです。そういう事件があったのかどうか。そして、この処理はどうなっているか説明してください。

[130]
説明員(警察庁警備局公安第三課長) 福井与明
これは11月17日に警視庁の亀有署の管内で起こった事件でございますが、被害者本人は、この事件につきましても、現在に至るも事情聴取は頑強に拒んでおります。もちろん被害申告も拒否しております。

それと、これも被害者なり被害者の関係者からの通報はございませんで、アパート居住者からの110番通報だったわけでございます。そういうことで事件発生から約30分後に警察が認知をしたという、いろいろな悪条件が重なっておりますけれども、これも現場に遺留されておりました鉄パイプ、懐中電灯等をたどりながら現在捜査を進めておる、かような段階でございます。

[131]
日本共産党 諫山博
通行人が110番する、現場には懐中電灯などが遺留されている、これで犯人がわかりませんというような捜査がありますか。

以上が、山崎洋一が殺されて、その報復という、革マルが全逓関係の中核を襲ったという事件です。

次に12月20日、今度は逆の復讐が行われるわけです。中核派が全逓の革マルを襲撃する。その襲撃を受けたのが金綱新二郎。彼らの機関紙「前進」によれば、「全逓高輪金綱に鉄槌」こういう見出しのもとに「わが革命派は捕捉した獲物をむざむざ逃がすほど甘くはない。よたつきながら逃げようとする金綱のえり首をつかみ、骨も砕けよとばかり鉄槌をふりおろしたのである。」「この憎むべき反革命分子の両手、両足、そして全身に、怒りをこめた鉄パイプの乱打をあびせかけ、血の海に沈めたのである。」こういうふうに犯罪の誇示がされていますが、これは犯人を検挙しましたか。

[132]
説明員(警察庁警備局公安第三課長) 福井与明
本件は、昨年の12月20日に警視庁の三田署の管内で発生した事件でございますが、本件を目撃した通行人からの通報で認知したわけでございますけれども、通報が発生後約4分ということで比較的早かった。それから本件については、被害者も一応調書作成に応じております。目撃者と参考人調書を約20人分作成しておりますが、そういうことで鋭意犯人をしぼり込むと申しますか捜査を進めておる、かような段階でございます。

[133]
日本共産党 諫山博
これは警察にしてみれば、わりあい捜査のしやすい事件でございますということのようですが、それでも結果的には鋭意捜査中ということになっている。

この事件でもう一つ別なことを質問します。

昭和49年12月2日付の「前進」の中にマルクス主義青年労働者同盟・全逓委員会の声明らしい文書が載っております。この中で「カクマル産別組織にたいして情容赦のない鉄槌の雨をふらせるであろう。」「反革命白色テロにたいして正義の報復を完遂することを宣言する。」「荏原カクマルに一人同調して発言した高輪局の兼綱の如きは戦々恐々として逃げまわり、職場、組合運動も放棄し、底なしの腐敗を深めているのだ。」ここで高輪局の金綱という男を名指しで襲撃するぞと予告をしているわけです。それから10数日の間に実際に金綱が襲撃されたという経過があったはずですが、警察は承知していますか。

[134]
説明員(警察庁警備局公安第三課長) 福井与明
いわゆる彼らが名指しで予告をすると申しますか、かような事案があるわけでございますが、このようなものにつきましては、もちろん内容によっては脅迫罪等が成立するものが当然考えられるわけでございますけれども、残念ながら、この予告を受けた相手が協力をしない。そういうことで、なかなか捜査が実らないわけでございます。

[135]
日本共産党 諫山博
法務大臣に質問します。

いま私が指摘した事件というのは新聞にも書かれないし、テレビにも乗らないし、ほとんどの人が知らない事件です。彼らの機関紙では、堂々と犯罪を予告し、戦果を誇示している。特に金綱の場合は金綱をやるぞということを機関紙に書いて、それから10数日のうちに本当に金綱がやられたのです。そして聞いてみると全く検挙はされていない。日本の治安に責任を負う法務大臣として、どう思いますか。

[136]
法務大臣 稻葉修
切歯扼腕にたえません。しかも私は、あなたの挙げられた事例の中で某々を襲撃するぞという宣言は、現行刑法でも脅迫罪にならないのかなというふうに思いますし、相手の名前を挙げないで報復宣言を堂々と機関紙などに載せていることについて、現行刑法の罪名にはないけれども、いずれにいたしましても、将来の立法上、治安維持上、犯罪の中に入れる、そういう新しい立法なども必要ではないかなというような感じを抱きます。現在そういうような暴力事件が頻繁に行われて、被害者の協力を得られないとはいいながら、なかなか検挙されていないこの現状に対しては、非常に責任を感じます。

[137]
日本共産党 諫山博
いまの法務大臣の発言はきわめて重大です。いま私が挙げたような事件は、いまの法律を改正しなければ検挙できないものではありません。警察がまじめにやろうとすれば、私がこの前指摘したような泳がせ政策をやらなければ、当然検挙できるはずの問題であります。何かもっと治安立法をしなければ取り締まりができないかのような考えを法務大臣が持っているとすれば、問題の本質をつかんでいない、こう言わざるを得ません。

刑事局長、いま私が指摘したような事件は、現行法で逮捕できないのですか。現行法で起訴できないのですか。

[138]
政府委員(法務省刑事局長) 安原美穂
次の機会には報復するぞというような宣言をしている者、その者が特定できますならば、当該報復事件が殺人等でございましたら、殺人の共犯ないしは教唆の疑いが出るという意味において、そういう犯人が特定できます限りにおいては、それは殺人の教唆、共謀の疑いのある事件であるということにはなろうと思いますので、現行法でできないことはございません。

しかし、いま大臣の申されましたのは、そういう教唆、共謀に至らない報復行為、リンチ行為を称揚する、ほめそやすというような行為自体が共犯、教唆にならなくとも処罰をするという立法も考えられないではないのではないかということを申されたのでございまして、現在の検挙が共犯、教唆として非常に検挙しにくい状況にかんがみて、取り締まりの徹底を期するためには、それも一つの方策であるということを申されたものと理解しております。

[139]
日本共産党 諫山博
もし法務大臣が、こうして大半の内ゲバ事件が処理されていないということを口実にして治安立法というようなことを考えておるとすれば、これはとんでもない考え違いですから、よく検討していただきたいと思います。

[140]
法務大臣 稻葉修
そんなことを申したのではありません。私の言うことを勝手に解釈して、法務大臣は治安立法を考えておるような発言をされることは迷惑至極であります。

[141]
日本共産党 諫山博
私は最後の言葉を信用したいと思います。そうでなくて、いまの法律でこれは処理しようとすればできるのだという観点を貫かなければ、いつまでたっても、こういう事件の検挙はできません。

彼らのやり口がいかに卑劣であるか、もう一つだけ私は事例を紹介しますが、ことしの6月19日に藤盛広之というのが殺されております。ところが、6月16日付の襲撃者側の機関紙「前進」には「白色襲撃の手引き者、高輪の金綱と残り少ないとりまき山本、藤盛は覚悟しておくがいい。」こう書いておるのですよ。6月16日付の新聞に「藤盛は覚悟しておくがいい。」ということが書かれ、19日には藤盛が実際に殺された。こういうことがこの日本で行われておるのだということを法務大臣ぜひ頭に入れておいてください。

そこで公安調査庁に質問します。

私がいま挙げた事件は、すべて革マルあるいは中核の全逓委員会の内ゲバ事件なんです。



[147]
日本共産党 諫山博
中核派の全逓委員会、革マル派の全逓委員会、それぞれこれから報復をするぞということを宣言するし、事件が起これば、これだけの戦果が上がったということを誇示する。お互いに文書合戦も続けているわけですが、どういう組織に属している連中が事件を起こしているのかということさえ、いまなお警察は正確につかまえていないという状況ですか。

[148]
説明員(警察庁警備局公安第三課長) 福井与明
ただいま申し上げましたように、中核派の場合はマル青労働という同派の青年組織的なものがあるわけでございますが、恐らくこれに相当する部分は革マルの場合は政治団体の構成員とシンパ層に分かれると思いますので、その実態はつかみがたい、これが現状でございます。

[149]
日本共産党 諫山博
法務大臣に質問します。

以上、私が挙げた事件は現行法で十分処理できる。問題は、その熱意と意思がないというふうに私は見ております。法務大臣としては、これだけの事件が起こっているのに、上の方からせん滅するというようなことは考えられないのか。

たとえば暴力団がいろいろ抗争事件を起こすわけですが、こういうときには頂上作戦というような言葉で、暴力団そのものを壊滅するというような方針を警察も法務省もとっていると思います。



[153]
日本共産党 諫山博
刑事局長に質問します。

私たちは、こういう暴力集団は、やはり首脳部を問題にする必要があると思うのです。たとえば北小路という名前がしばしば新聞に出るのですが、われわれは復讐するぞということを宣言する、そして事件が起これば、われわれがやったんだということを誇示する。そのほか新聞にもいろいろ彼らの戦果誇示が出てくるわけですが、革マルとか中核とかこういう幹部、組織をどうするのかというような問題については、刑事法的にどのような検討をしているのですか。

[154]
政府委員(法務省刑事局長) 安原美穂
一番簡単な方法は、ある団体がその団体内において犯罪行為をやった場合においては、その長たる者を処罰するというような立法があれば一番簡単でございますが、そういう立法はないわけでございますので、またそういう立法が必ずしも妥当だとは思いませんから、結局ある刑法に当たる犯罪行為がありました場合には、そういう直接の下手人でない者を処罰する方法は、それが共同正犯であるか教唆犯であるか幇助犯であるかということでございます。

したがいまして、いま御指摘のような問題につきましては、検察当局は常にそういうリーダー格の者に共犯の疑いがあるかどうかということは検討しておるわけでございますが、遺憾ながら共犯、教唆犯という場合には直接の下手人ではないわけでありますから、直接の下手人を検挙するということを前提にして、その下手人とリーダーとの間がどういう関係であったかということを捜査していくというのが捜査の常道でありますので、そういう方法で、まず何よりも下手人を挙げるということに全力を挙げ、そしてでき得べくんばリーダーが共犯者であれば、それについて捜査の手を進めるというのが検察のやり方でございます。